前回のブログで、バターチキンは簡単には作れないと書きました。
ただし、お店レベルの味を作ろうとするとですが…
では、そもそも本場のバターチキンは、どんな味なのか。
インド業界歴30年以上の私の感想は、日本で食べるバターチキンはインドのバターチキンとは味が違います!
では、大きな違いはというと、まずはインドのバターチキンは日本のようにそれほど甘くありません。そして、ガネーシャダイニングのバターチキンの甘さは他店の追随を許さないほどの甘さです(苦笑)。
そして、なによりもインパクト大のその濃厚さがインドのバターチキンの大きな特徴です。
では、なぜ違うのか。
スタッフに聞いてみました。
「食材がぜんぶ違います」(コックA)
「トマトはフレッシュしか使いません。」
「スパイスが新鮮。もっと良い匂いします。」(コックA)
「鶏肉も朝絞めたばかりの鶏肉使います。丸のままさばいてます。」
「バターチキンには骨付きのチキン使います」(コックB)
とにかく、食材が大きく影響しているようです(;^ω^)。
インドでひたすらバターチキンを食べまくる
2019年、今更ながら、なぜ日本のバターチキンは甘いのか、“バターチキンの真実”を確かめたく、インドで“いろいろな店のバターチキンを食べるぞ!”ということで渡印、デリー滞在中の3日間、ひたすらバターチキンを食べまくりました。
結論から言うと、インドでもお店によってバターチキンの味は千差万別でした。
あえて、これがほんまもんのバターチキン!とは明言しませんが、共通点で言えば、インドのバターチキンは、
濃厚なソース、
ほのかな甘みの中に、スパイスがしっかりと自己主張、
大ぶりの骨付きタンドリーチキンから染み出るスパイスとジューシーな肉感、
そして、全部食べ切るのは不可能なヘビーさ
でした。
ちなみに、インドでバターチキンと一緒に食べるのは、無発酵の全粒粉で作った“パラタ”や“ロティ”、タンドール窯で焼いたパリッとした食感のパンです。
このあっさりとした味わいの“パラタ”や“ロティ”が濃厚ソースのバターチキンにあいます。
【タンドール窯で焼くロティ】
さて、バターチキンの発祥の店として知られているのが、インドのデリーにある「モティマハル(Moti Mahal)」レストランです。世界各国の著名人が訪れた伝説のレストランで、日本人観光客も必ず訪れる有名店です。
バターチキンは「モティマハル(Moti Mahal)」の創設者がもったいない精神から、保存がきかない余った食材をどう使いまわすかで考えられた料理と言われており、バターチキンの具材であるタンドリーチキンもモティマハルの創設者が考案した料理だそうです。素晴らしい!
「モティマハル(Moti Mahal)」レストランのバターチキン、はるか昔15年以上前に食べましたが、まろやかな味わいながらも、スパイスがちゃんと自己主張しており、しっかりとした強烈な味わいでした。
今やジャパン・バターチキン がスタンダード?
そして、日本のバターチキンは独自に進化した、“ジャパン・バターチキン Japan Butter Chicken”に変化を成し遂げたように感じます。
なぜ、“ジャパン・バターチキン”になったのか、大きな要因は、やはり食材によるものだと思います。スパイスはもちろん、トマト、玉ねぎ、鶏肉などインドで使用する食材とはそもそも鮮度、価格が違います。
なかでも、本場インドではトマトの価格が安価で、フレッシュトマトをふんだんに使えるので、トマト缶と違い、バターチキンソースを作るときに酸味が抑えられ、トマトの本来の甘さが際立つまろやかな味に仕上がります。バターもかなりの使用量で、これによりコクが出ます。
そして、具材のチキンは朝絞めの新鮮な丸鶏。
日本では骨付きは食べにくいこともあり、ほとんどのお店が骨なしのチキンを使っていますが。本場は骨付きタンドリーチキンです。朝絞め骨付きチキンを自家製のソースにマリネートし、余分な脂を落としながらタンドール窯でじっくり焼く。これだけでも、十分に美味しくいただけます!
【骨付きタンドリーチキン】
一度、フレッシュトマトを使用してインドと同じように作ってもらいましたが、インドに近い味が再現できたかというと、ちょっとインドは遠かったです(笑)。
インドから来たコックさんが、日本にある食材をコスパよく作ったのが“ジャパン・バターチキン”なのではないかというのが、私の見解です。
インドのようにさほど濃厚ではなく、高カロリーでもなく、日本人の口にあった“ジャパン・バターチキン“。とかく、日本は他国の文化を吸収した後、あらたなものアウトプットする土壌ができているようです。「藍は藍より出でて藍より青し」。これからも、お店によってオリジナルの新たなバターチキンが生まれてくるのではないかと楽しみです。
そして、当店ガネーシャダイニングのバターチキンの美味しさの秘密は甘さだけじゃない!甘さの奥にある深淵なスパイスマジックです!